愛媛大学理学部 沿岸環境科学研究センター

achievements

平成22年度-研究実績

PBDEsやPFOSの代替物質として使用量の増大が指摘されているHBCDsや短鎖・長鎖のPFCs 9種、さらにUV吸収剤や短鎖塩素化パラフィン等について分析法を開発した。また、バイオアッセイの包括毒性評価値に対する既知物質の寄与割合を化学分析 /バイオアッセイで推定する手法を確立し、実試料へ適用した。まず、ヒトの母乳試料の分析を試み、POPs候補物質による汚染がアジア全域に及んでいるこ とを実証した。またPBDEsなどの難燃剤は、途上国にも汚染源が存在することが示唆された。そこで、ベトナムやインドの電子電気機器廃棄物処理地域を対 象に住民や作業従事者の血液・毛髪、作業環境大気やダスト試料の分析を試み、発生源における曝露ルートを解明するとともに取込量の解析から難燃剤のリスク が危惧されることを指摘した。また、愛媛大学の生物環境試料バンクに保存されている水棲哺乳類や柱状堆積物の試料を分析したところ、先進国のHBCDs汚 染が近年急速に進行したこと、途上国のPBDEs汚染も経年的に拡大したこと、外洋など遠隔地のHBCDsおよびPFOS汚染が今世紀になって急上昇して いること等が判明し、途上国および遠隔地のPOPs候補物質汚染は今後しばらく継続するものと推察された。さらに、野生生物およびヒトの血液試料を対象に PCBs・PBDEsの水酸化代謝物を同定・定量した結果、陸棲哺乳類は海棲哺乳類に比べ代謝物の蓄積量が多く甲状腺ホルモン撹乱等のリスクが懸念され た。また、窒素・炭素安定同位体比を用いた海洋生態系食物網の解析から、PBDEs等新規POPsの生物濃縮特性を明確化した。加えてPPAR遺伝子を利 用したレポーター遺伝子アッセイ系を構築し、野生生物を対象としたフッ素化合物の毒性リスクを評価した。また、アンドロゲン・エストロゲン・Ah受容体結 合/レポーター遺伝子アッセイバッテリーを野生高等動物へ適用し、内分泌かく乱化学物質の潜在的なハザードリスクを明らかにした。