当研究室の新しい論文が Journal of Hazardous Materials Advances にアクセプトされました。
https://doi.org/10.1016/j.hazadv.2026.101468


https://doi.org/10.1016/j.hazadv.2026.101468

2026年6月23日から26日に長崎県で開催された「第5回環境化学物質合同大会(第34回環境化学討論会)」において、本研究室に所属する大学院生4名が優秀発表賞を受賞しました。
本大会は、環境中の化学物質の分析、動態、毒性、リスク評価などに関する研究成果が発表される国内有数の学術大会です。今回、口頭発表およびポスター発表の内容と発表技術が評価され、以下の4名が表彰されました。
発表題目
「ゼブラフィッシュ胚を用いたPFOA及び代替物質(HFPO-TA, HFPO-TeA)の甲状腺ホルモン受容体活性評価と神経伝達影響解析」
PFOAとその代替物質であるHFPO-TAおよびHFPO-TeAを対象に、発生期のゼブラフィッシュにおける甲状腺ホルモンかく乱作用と神経伝達系への影響を解析しました。
TR CALUXを用いた試験では、いずれの化学物質も甲状腺ホルモン受容体βに対する活性を示しませんでした。この結果から、これまでに観察された甲状腺ホルモン恒常性への影響は、受容体への直接作用とは異なる機序による可能性が示されました。
HFPO-TeA曝露後の神経伝達物質分析では、ドーパミン、セロトニンおよびGABAそのものに明確な変化は認められませんでした。一方、一部の代謝物に変動がみられ、HFPO-TeAが神経伝達物質の代謝酵素に影響する可能性が示されました。
発表題目
「瀬戸内海沿岸域の二枚貝に蓄積するPFASレベルの時空間トレンドと生物濃縮性の評価」
2017年と2024年に瀬戸内海沿岸で採取された二枚貝を分析し、有機フッ素化合物(PFAS)の時間的・空間的な変化と生物濃縮性を評価しました。
一部の地点では、新興PFASである8:2 fluorotelomer sulfonic acid(8:2 FTS)とHexafluoropropylene oxide tetramer acid(HFPO-TeA)が2024年の試料からのみ検出されました。近年、瀬戸内海沿岸に新興PFASが流入している可能性を示す結果です。
海水から二枚貝への生物濃縮係数を算出したところ、一部の代替・新興PFASは、従来型PFASと同等またはそれ以上の生物蓄積性を示しました。瀬戸内海におけるPFAS汚染の経年変化と地域特性を明らかにした点が評価されました。
今回の受賞は、各学生が日頃から積み重ねてきた研究と、発表に向けた準備の成果です。受賞した皆さん、本当におめでとうございます。
本研究室では、環境中に存在する化学物質の汚染実態、生物への蓄積、毒性作用、野生動物における薬物代謝などについて、化学分析、細胞試験および動物を用いた研究を進めています。今回の成果を今後の論文発表と研究の発展につなげていきます。
発表題目
「タンチョウヅル肝ミクロソーム画分を用いたin vitro薬物代謝試験によるアゾール系抗真菌薬の代謝能および代謝酵素の評価」
希少鳥類であるタンチョウの肝臓から調製したミクロソーム画分を用い、アゾール系抗真菌薬ボリコナゾールの代謝特性をin vitroで評価しました。
ボリコナゾールは主にN-oxide体とHydroxy体へ代謝され、N-oxide体が主要な代謝物であることが示されました。酵素阻害試験から、N-oxide体の生成にはCYP2CおよびCYP3A、Hydroxy体の生成には主にCYP3Aが関与する可能性が示されました。
in vivo試験が難しい希少野生動物を対象に、薬物代謝特性と関与酵素を明らかにした研究です。タンチョウをはじめとする希少鳥類の獣医療や、医薬品の適正使用に役立つ基礎的知見として評価されました。
本研究は、帯広畜産大学および釧路市動物園との共同研究として実施しました。試料提供と研究実施にご協力いただいた関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。
発表題目
「大阪湾の魚類に蓄積するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤および残留性有機汚染物質レベルの種間比較と生物濃縮性の評価」
2023~2024年に大阪湾で採取された7種の魚類を対象に、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BUVSs)と残留性有機汚染物質(POPs)の蓄積状況を調査しました。
大型魚のスズキではBUVSs濃度が高く、UV-Pが特徴的に検出されました。餌生物を含む解析から、UV-Pが他のBUVSsやPOPsより高い生物濃縮性を示すことも明らかにしました。従来の脂溶性のみでは説明できない、スズキに特有の曝露経路を示した点が評価されました。
今回の受賞は、各学生が日頃から積み重ねてきた研究と、発表に向けた準備の成果です。受賞した皆さん、本当におめでとうございます。
本研究室では、環境中に存在する化学物質の汚染実態、生物への蓄積、毒性作用、野生動物における薬物代謝などについて、化学分析、細胞試験および動物を用いた研究を進めています。今回の成果を今後の論文発表と研究の発展につなげていきます。
令和8年2月25日、沿岸環境科学研究センター (CMES) 化学汚染・毒性解析部門の福井光貴さん (大学院理工学研究科博士前期課程1年生) が廃棄物資源循環学会中国・四国支部奨励賞を受賞しました。同賞は、令和7年9月17日~ 19日に名古屋大学で開催された第36回廃棄物資源循環学会研究発表会での発表が評価されたもので、厳正な審査を経て、将来の活躍が期待される若手会員に与えられたものです。福井さんの発表演題は、「ベトナムの廃タイヤリサイクル施設で粉砕されたタイヤチップから溶出する添加剤由来化合物の網羅的スクリーニング:作業者のリスクを把握するヒト模擬消化液を用いた溶出実態」で、沿岸環境科学研究センターの国末達也教授と田上瑠美准教授の指導のもと取り組んだ研究成果の発表でした。
福井さんの研究は、ベトナムのハノイ市内に立地する廃タイヤリサイクル施設から採取した廃タイヤ粉砕チップを対象に、ヒト模擬消化液を用いた溶出試験とスクリーニング分析を実施したもので、廃タイヤチップを加えた模擬消化液から21種の添加剤関連物質の検出が明らかとなり、作業従事者は微細化されたタイヤチップを取り込むことで、多くのタイヤ添加剤由来化合物を腸管吸収している可能性が高いことが明らかとなりました。とくに、老化防止剤の一種であるN-(1,3-dimethylbutyl)-N’-phenyl-p-phenylenediamine (6PPD) の変化体でサケ科魚類への致死毒性を示す6PPD-quinone (6PPD-Q)が相対的に高い強度で検出されたことは特筆に値し、作業従事者に対する健康影響が危惧されました。本研究結果から今後、同施設では作業従事者に対する廃タイヤ粒子曝露の低減に向けた適切な管理体制の強化が求められることを提示した点が評価されました。

先日発表したペットフードに含まれるPFASに関する研究論文に関して、New Scientistから野見山准教授が取材を受けました。
New Scientistは、1956年に創刊された科学技術のあらゆる側面を扱う英語の週刊科学雑誌で、世界でも読者数の多いことで知られる一般向け科学技術系雑誌です。
【概要】
愛媛大学 先端研究院 沿岸環境科学研究センター(CMES)の野見山桂准教授らの研究グループは、日本国内で流通する犬用・猫用ペットフード100製品を対象に、34種類のPFAS(有機フッ素化合物)を網羅的に分析しました。その結果、多くの製品からPFASが検出され、とくに魚を主原料とする製品で高濃度となる傾向が明らかになりました。
欧州食品安全機関(EFSA)の耐容摂取量を用いたハザード指数(HQ)評価では、複数の製品でHQが1を超え、健康影響の可能性が示唆されました。HQはあくまでヒトを対象としているため、今後はイヌ・ネコへの影響について明らかにしていく必要があります。
本研究は、ペットフード中PFASの汚染実態を体系的に示した国内初の大規模研究であり、伴侶動物の健康リスクおよび家庭内共曝露の観点から重要な知見を提供します。

【詳細】
1.PFASは多くの製品から検出: ドライフードでは濃度が高い傾向が見られ、ウェットフードでは摂取量換算で曝露量が高くなることが示されました。
2.魚由来原料が主要な汚染要因: 主原料別解析の結果、魚を主原料とする製品でΣPFAS濃度が有意に高値を示しました。
特にPFOS、PFUnDA、PFTrDAなどの長鎖PFCA類が卓越しており、海洋食物網での生物濃縮を反映していると考えられます。
3. 原産国による特徴: アジア製品群と米国製品群でPFAS組成に差異が確認されました。また、中国由来のPFOS代替物質F-53B関連化合物(9Cl-PF3ONS)も一部製品から検出され、サプライチェーン汚染の可能性が示唆されました。
4. 健康リスク評価(HQ): ヒトを対象にしたEFSAのTWI値(PFOS, PFOA, PFNA, PFHxS)を用いて推定したハザード指数では、平均値でHQ>1となる製品群が存在しました。今後はイヌ・ネコを対象にした影響評価指標が求められます。
【論文情報】
掲載誌:Environmental Pollution
題名:Widespread PFAS contamination in pet food: Dietary sources and health risks to companion animals(和訳:市販ペットフードにおけるPFAS広域汚染:食餌由来曝露源と伴侶動物の健康リスク)著者:Kei Nomiyama*, Aika Sato, Rumi Tanoue, Kohei Saeki, Yoshinori Ikenaka, Hazuki Mizukawa
DOI:10.1016/j.envpol.2026.127779
URL:https://doi.org/10.1016/j.envpol.2026.127779