愛媛大学理学部 沿岸環境科学研究センター

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須之内朋哉さん (大学院理工学研究科博士後期課程2年生) が Society of Environmental Toxicology and Chemistry (SETAC) Asia-Pacific Conference 2022でBest Poster Presentationを受賞しました

この度、沿岸環境科学研究センター(CMES)化学汚染・毒性解析部門の須之内朋哉さん(大学院理工学研究科博士後期課程2年生)が Best Poster Presentationを受賞しました。同賞は、2022年9月5日 (月) 〜 8日 (木) にオンラインで開催されたSociety of Environmental Toxicology and Chemistry (SETAC) Asia-Pacific Conference 2022での発表が評価されたものです。須之内さんの発表演題は、「Temporal trends and interspecies comparison of POPs levels in melon-headed whale (Peponocephala electra) and Dall’s porpoise (Phocoenoides dalli)」で、沿岸環境科学研究センターの国末達也教授の指導のもと取り組んだ研究成果の発表でした。

須之内さんの研究は、棲息海域が異なる外洋性ハクジラ類2種(熱帯-亜熱帯海域に棲息するカズハゴンドウと寒冷海域に棲息するイシイルカ)の脂肪組織(脂皮)に蓄積する残留性有機汚染物質(POPs)濃度の経年変化を、生物環境試料バンク(es-BANK)に冷凍保存されていた1980年代以降のアーカイブ試料を活用して解析したものです。解析の結果、近年規制された臭素系難燃剤のヘキサブロモシクロドデカン濃度は現在も両種で上昇していること、その一方で、1970~1980年代に規制された塩素系POPsの経年変化には種間差が認められ、移動拡散性の高いことが知られている一部のPOPs濃度はカズハゴンドウで低減していたのに対し、イシイルカでは定常状態を示し寒冷外洋域へ大気輸送が継続していることを提示した点が評価されました。

Our research paper published recently in Science of The Total Environment is introduced via a news release in the following international web sites.

Our research paper published recently in Science of The Total Environment ‘Health impact assessment of pet cats caused by organohalogen contaminants by serum metabolomics and thyroid hormone analysis’ is introduced via a news release in the following international web sites.

EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/959746

AlphaGalileo
https://www.alphagalileo.org/en-gb/Item-Display/ItemId/223506

Asia Research News
https://www.asiaresearchnews.com/content/effect-environmental-contaminants-health-pet-cats

愛媛大学研究成果ストックサイト
(英)https://research.ehime-u.ac.jp/
(日)https://research.ehime-u.ac.jp/post-ja/

Twitter
https://twitter.com/Ehime_Univ/status/1551817811433238529

Our new paper has been just published in Science of The Total Environment.

Our new paper entitled ‘Health impact assessment of pet cats caused by organohalogen contaminants by serum metabolomics and thyroid hormone analysis’ has been just published in Science of The Total Environment.

The article is now available on https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0048969722035872

愛媛大学沿岸環境科学研究センター、愛媛大学大学院農学研究科、北海道大学獣医学研究院の共同研究チームは、これまでの研究で、日本のペットネコが海産物を主原料とするキャットフードの摂餌により、慢性的にポリ塩化ビフェニル(PCBs)に曝露されていること、毛づくろい(グルーミング)によりハウスダスト中に含まれるポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDEs)に曝露されていることを明らかにしてきました。しかし、それら汚染物質による健康への影響は明らかになっていません。本研究では、日本のペットネコを対象にした有機ハロゲン化合物(OHCs)曝露による健康影響に焦点を当てました。ネコ血清中PCBs、PBDEs濃度と甲状腺ホルモン濃度との間に有意な負の相関が認められ、OHCsの曝露がネコの血中甲状腺ホルモンレベルを低下させている可能性を示しました。さらに多変量解析ツールで血清中のメタボロームデータとOHCs曝露レベルとの関係を解析した結果、親化合物(PCBsおよびPBDEs)とその水酸化体(OH-PCBsおよびOH-PBDEs)の血清中残留レベルが、それぞれ独自の一次代謝経路と関連していることが示され、親化合物とフェノール化合物で異なる毒性影響が示唆されました。とくにPCBsはグルタチオン代謝やプリン代謝を含む多くの代謝経路との関連しており、PCBsの曝露がペットのネコに慢性的な酸化ストレスを引き起こしていることを示しました。酸化ストレスはがんや生活習慣病と深く関連しており、今後は汚染物質曝露とネコの疾病との関連についての解明が必要です。

本研究成果に関する論文は、2022年6月24日に環境科学の国際誌である「Science of The Total Environment」に掲載され、オンライン版で公開されました。

 

第5回ケミカルハザードシンポジウムを開催しました

2022年2月3日に第5回ケミカルハザードシンポジウムを開催しました。
本シンポは元々、北大獣医・毒性学教室と愛大・CMES環境化学研究室との合同ゼミを始まりとしています。
本年度は北海道東北地区部会・中国四国部会は共催によりオンラインで開催しました。
テーマは、「環境化学における中毒診断」とし、これまでこれまで両研究室で取り組んできた、環境化学・環境毒性学的な内容に加え、「質量分析計を用いた中毒診断」についての知見の充実と研究ネットワークの拡大を図るため、以下の2名の先生をお招きし、特別講演を実施して頂きました。
特別講演1:岩手医科大学・藤田友嗣先生
「臨床中毒におけるマススペクトロメトリーの活用」
特別講演2:国立水俣病総合研究センター・寶來佐和子先生
「ヒトにおけるメチル水銀中毒とは何か?」
本シンポジウムは事前に70名以上のご登録いただき、会議中も常時50名以上の参加をいただき、盛況となりました。
お忙しい中、本シンポジウムにご参加頂いた方々に感謝申し上げます。

LaMer公開シンポジウム(オンライン)のお知らせ

下記の要領でLaMer公開シンポジウム(オンライン)を行うこととなりました。聴講は無料・事前申し込み不要です。多くの皆様のご参加をお待ちしております。

【日 時】2022年1月27日(木)15:00〜17:00(Zoom開催)

https://zoom.us/j/97664021353?pwd=L0dtSko2eEZRYU9JT1p4K1dFY01qdz09

ミーティングID: 976 6402 1353 ,パスコード: 479436

【対象】どなたでも参加いただけます。

【テーマ】生体試料を用いた化学物質ばく露評価研究

【要 約】

胎児や乳幼児は成長発達の過程にあるために化学物質による影響を受けやすいと考えられており、環境省の「子どもの環境と健康に関する全国調査(エコチル調査)」でも、既に妊娠中の化学物質ばく露と子どもの成長・発達との関連について報告されています。エコチル調査では、血液や尿などの生体試料中の化学物質濃度と健康影響との関係を明らかにしますが、多くの化学物質について、ばく露源(経路)や体内での動き(動態)について情報がないため、ばく露を減らすための対策を講じることが困難な状況です。本シンポジウムでは、化学物質ばく露を評価する方法や体内での動態に関する研究の紹介を通じて、ばく露評価研究が将来の私たちの暮らしにどのように貢献できるのか議論します。

LaMerセミナー20220127(Zoom)